デザインは、自分とたくさんの人を繋げてくれる仕事。


僕の父はデザイン会社のディレクターで、デザインの仕事は小さな頃から身近にありました。美術系のコースがある高校で学び、平面から立体までいろいろな作品を作ってきましたが、その時はすでに大学卒業後は自分もグラフィックデザイナーになろうと決めていました。

将来の目標は決まっていましたから、BUNKAではそれに向かって積極的に動くこと、ものづくりを追求することを一番に考えていました。そこで、入学してすぐ自分から同じ学科の仲間に声をかけ、雑誌を作ることに。しかし、右も左もわからない僕たちは、失敗を何度も繰り返しました。でも、その経験から成長できたのだと思います。

その頃は、誌面デザインだけではなく、企画から原稿の執筆、撮影に至るまですべての編集工程を自分ひとりでやっていました。そのうち、BUNKAだからこそできるものにしようと、ファッションの学科や(系列の)文化服装学院の学生に協力をお願いしたり、モデルとして登場してもらうようになりました。また、写真や原稿はそれが得意な人に声をかけ、自分は全体をディレクションするというやり方を取り入れるようになっていきました。

好きなことに打ち込める自由な環境は、BUNKAの魅力の一つです。1年次から分野を絞らずにデザインや造形を幅広く学べるのも、いろいろな表現や手法にチャレンジできる絶好の機会でした。フォトグラファーやラジオ局の関係者など、業界の第一線で活躍されている方のお話を聞く授業もあって、未知の世界に触れる機会が多かったことも印象に残っています。先生の紹介で、1年ほど出版社で編集アシスタントのアルバイトもしました。そこは付録付きムック本を制作する部署で、同じ学科の卒業生も働いており貴重な体験ができました。これがきっかけで将来像がますますクリアになっていき、本や雑誌などの紙媒体に限らず、ものづくりに幅広く携わっていきたいという思いが強まりました。

卒業後は、紙媒体やWebサイトなどを制作するデザイン会社でデザイナー兼ディレクターとして働きながら、個人でもデザインの仕事を請け負っています。学生時代に出会った映画監督の作品に参加したり、知人が経営する飲食店のロゴを制作したりと、いろいろなアプローチからデザインに携わっています。

僕にとってのデザインは、仕事ですが、趣味でもある。でも、オーダーをしてくれる人、見てくれる人、使ってくれる人がいて初めて成り立つものなので、自分のためではなく誰かのためのものだと思っています。自分とたくさんの人を繋げてくれるこの仕事で、もっともっと世界を広げていきたいです。

  • 若い世代に社会を知ってもらうという仕事。


    実は、卒業後も大学との関係は続いています。先日はコースの後輩たちに向けて、社会で働くリアルな実態について語りました。みんな熱心に聞いてくれて嬉しかったですね。学生からの質問に答えていると、自分も初心に帰る思いです。
    ほかにも、会社に来たデザイン案件を「学生と一緒にやったらどうだろう」と、授業にプロジェクトを持ち込んだこともあります。こうやって社会と学生を繋ぐことも、僕にできる仕事の一つだと思っています。